蹄脚硯という面白い形をした硯がある。奇蹄類(多分馬)の蹄のかたちを模した硯である。画像はここで見られる。以前に平城京の発掘から出てきた蹄脚硯を本で見たが、先日仙台メディアテークで仙台周辺の遺跡の発掘にボランティアで参加した活動報告展示があり、そこにこの硯があった。奈良時代には地方でもこの種の硯が使われていたことを示している。
奈良時代は仏典の写経などで墨で文字を書くことが多かった。坪井清足著「平城京再現」によれば、平城京には写経所が何箇所もあり、経師と呼ばれる経を書き写す人、校生という校正する人など沢山の役人がいた。硯の需要も多かったと想像される。
聖武天皇のよる一切経の写経奉納といっても、実際に経典を書き写したのこれらの写経生であったわけだ。