写真は秋保への途中の路傍に仲良く並んでいた牛供養と馬頭観音の碑である。
牛供養はそのままであるが、馬頭観音とは、馬供養のためのようにみえるが、なぜ馬頭観音なのか?
インドの神に「馬頭神」というのがある(柳宋玄「十二支のかたち」(岩波書店:1995))。この神の名前は「ハヤグリーヴァ」である。太陽を導くもの、太陽の象徴、さらには太陽神「ヴィシェヌ」と同一だと見なされるヒトのための神である。これが中国に入り、馬頭明王となる。大乗仏教系の仏教神となる。これが日本には入り、馬頭観音となる。だから、馬頭観音は馬の霊力にあやかったヒトのためにあったわけである。
これが江戸時代に入り、馬頭観音は馬の供養、馬の保護神として信仰されるようになる。今も多くの場所で碑を見かけるほどポピュラーになった。
馬の温泉
手元にある飯島裕一著「温泉の医学」の中に馬の温泉治療について書いてあった。古い本などで今でもそうなっているか分からないが、面白いので紹介しておく。
場所は福島県いわき市で日本中央競馬会・競走馬総合研究所磐城支部である。馬の脚の腱炎(けんえん)、関節炎、筋肉痛、骨折などの治療・療養に温泉を取り入れている。入院治療した75%が”職場復帰”しているそうで、かなりの効果があるらしい。
馬の温の温度は摂氏38から40度と温め、入浴時間は15分から20分程度、ぬるい湯に脚だけ浸けて心臓の負担をかけねいようにするそうだ。シャワーをかけることで「打たせ湯」の効果を試している。気持ちはよくて、あくびをしたり、居眠りをする馬もいるそうだ。
馬も最初は温泉が怖いらしく、最初は恐怖のために震えたり、鼻息も荒く抵抗するそうだ。でも、1週間もすると慣れる。温泉療養の期間は平均で約140日である。羨ましいくらいのんびりとした療養である。
「馬の尾にいばらのかかる枯野(かれの)哉(かな)」(蕪村)
馬を手の内に入れる
インストラクラに「馬を手の内に入れる」ようにと言われる。
Alios Podhajsky”The complete Training of Horse and Rider”のなかで”The horse steps into the rein”が該当する言葉かなと思われる。この言葉がでる章では”collection”(まとめる)を説明している。馬の後肢が前方に移動してこの脚で体重を支えるようにすると頭が上がり前肢が自由になる。
この状態を馬が”collect”されたというし、「馬を手の中に入れた」ことになる。このためには、後肢が快活に動く必要があり、乗り手の脚による扶助が決定的に必要になる。手綱がきちんと張れていないと、せっかく手に入れた馬を逃してしまう。この点に手綱(rein)の役割がある。この本でも強調されているが、馬の頭を上げるために、手綱を引っ張ることではダメである。あくまでも後肢が前方に来ることが大事である。
「こがらしやひたとつまづく戻(もど)り馬(うま)」蕪村
「さがり馬」神事
「さがり馬」神事。熊本県八幡市の河尻神宮で10月17日に行われる馬の神事である。河尻神宮で行われる馬の神事の一つで、この前後にも馬の神事がある。
説明によれば
「1197年、河尻三郎実明が鎌倉の鶴岡八幡宮を勧請したのが始まりで春日大神・天照皇大神・鶴岡八幡・住吉大神・阿蘇大神が祀られています。御神木は大柊で若木のときは葉に刺があり、老木になると刺がとれるので長寿の守護木としても仰がれています。大祭は毎年10月15~19日に開催され、流鏑馬・下り馬・風流舞・獅子舞・提灯行列・子供みこし・飾り馬などが登場する勇壮な祭りです。」
そのなかでもこの「さがり馬」の神事は勇壮である。馬のたてがみを三つ折り(便箋を封筒に入れるときに便箋の長い方を三分の一の長さになるように畳む。これが三つ折り。馬のたてがみのあるはばの部分をたてがみの垂れている方向で三つ折りにして先端を掴む、これを「下がり手」(まさに馬にぶら下がる勢子)の左手首で掴み、手綱をその手に持つ。神宮の参道にきたら鞭を当てると馬は駆歩を始める。乗り手でなく、「さがり手」はこの馬の走りに合わせて走り、参道がかなり社に近づいたら、「下がり手」は馬の横腹に体重をかけ馬にぶら下がる。これが神事である。
参道は砂利道なので、この神事で馬が駈歩をすると砂埃が上がり、これを勇壮な雰囲気になる。
遵守すべき十二ヶ条
Sarah Blanchard著”The power of Postive Horse Training- Saying Yes to Your Horse”(Howell book house:2005)の中でHorse Trainingで遵守すべき十二ヶ条を挙げているので記録に残しておきたい:
1.Never Punish Fear
馬が感ずる恐怖を罰を持って修正しようとしてはいけない。
2.Say Thank You
新しいことをやって少しでも進歩があったらすかさず誉めること。
3.Say Please
なにかをさせる前にそれと分かるサインをだすこと。
4.Use Good Stress, Not Distress
学ぶことは馬にとってもよいストレスとなる。でも、”no pain no gain”を強いてはダメ。
5.Leave Your Personal Baggage at Home
個人的ないざこざで馬に当たるな。
6.Understand that Your Natural Aids Are Most Important Communication Tools
乗り手の拳、脚,声、体重のバランスが馬とコミニュケーションするための最も重要なツールであること。
7.Encourage Your Horse’s Curiosity and sense of Play
好奇心と遊び心
8.Keep the Lines of Communication Clear
馬に送る信号は必要な時に必要な量だけにする。不必要な信号は送るな。また送った信号のレスポンスを必ず聞くこと。
9.Plan Your Ride and Ride Your Plan
目標をもった乗馬。各自の能力に沿った方法で。
10.Keep Your Horse and Yourself Safe from True Danger
コントロールできない危険は排除しなさい。
11.Create Simulated Danger That You Can Control
逆にコントロールできる新しいものには馬を経験させ、馬がそのような状況で落ち着いていられるようにしなさい。
12.Understand Your Horse’s Comfort Zones
むりをしないで少しずつ新しいことを。
対称性のやぶれ
馬も含めて四肢を使った歩様(Gaits)で移動する生き物の歩様は(左右)対称性歩様と(左右)非対称性歩様に分類される。いずれの歩様も周期的な歩様である。1周期内の時間を1サイクルと呼ぶことにする。
対称性歩様(Symmetrical Gaits)は左側の二肢の動きのパターンが半サイクル後に右側の二肢に現れる。だから半サイクルずらすと左右のパターンは鏡面対称になる。典型的なものが馬の速歩(Trot)で見られる斜対歩である:
頭
① ②
② ①
馬の歩様の中でこの対称性を持つものは、常歩(Walk),速歩(Trot)があり、静止(Still)も歩いていないけれどこの対称性を持つ。
ところが駈歩(Canter)にはこの対称性がない。このような歩様を非対称性歩様(Asymmmerical Gaits)と呼ぶ。だから馬の速歩から駈歩への歩様の遷移は「対称性のやぶれ」である。常歩から速歩への遷移にはこの「対称性のやぶれ」はない。この点で、馬の歩様の遷移では、常歩から速歩の遷移より、速歩から駈歩の遷移が興味深い。
なぜ馬は速く移動したいときに非対称性歩様をとるのか?
インパラなどの動きをみると捕食者が現れるとホッピング(Hopping)をして敵から逃げる。ホッピングは対称性を持った歩様である。
頭
② ②
① ①
ホッピング
瞬間的に左右にコースを変える場合でもこのホッピングを維持したまま行う。多分インパラの体重が軽いのでこのようなことができるのかもしれない。
馬も含めて体重のある草食動物が捕食者から逃れるため、左右にコースを変えたいときには慣性は大きすぎてホッピングを維持してのコース変更は困難だろう。左右のコース変更を高速を維持してできるのが馬の非対称な歩様である駆歩なのかもしれない。
駈歩(Canter)は、左右の対称性が崩れた歩様なので、右手前駈歩と左手前駈歩がある
頭
② ③
① ②
右手前
頭
③ ②
② ①
左手前
右手前は最後に動く脚は右前肢で、駈歩で四肢が地面を離れるときに右肩が下がる。だからコースを自然と右に採れる。この反対に、左手前では、コースを自然と左に採れる。
このようなことが馬が非対称性歩様である駈歩で走る理由のように思える。体重のある草食動物(象は重すぎて速歩でおわり)は高速では非対称性歩様で走り回ると思う。
リズミカルな歩様(Gaits)
馬の走り方は長さがきまった振り子のようでなければいけないと言われる。長さが決まった振り子は小さく振れても大きく振れても一定のリズムで振れる。このリズムは一定時間内での往復運動の回数で表現される。これが振動数で「ヘルツ」という単位を使う。この回数は1秒間で20回ならば20ヘルツというわけである。長さが決まった振り子は大きく振れても小さく振れても振動数は変わらない。馬も直線でもターンするときでもまた回転するときでもこの振動数を同じにするように乗るとよいと言われる訳である。一方馬の走る速度は振動数だけでなく、馬の歩幅(歩度)にもよる。歩度を詰めると振動数は同じでも速度は小さくなり、歩度を伸ばすと速度は速くなる。だから馬を回転させるときには振動数(リズム)はそのままで歩度を縮めて速度を落として回るわけである。
馬の走り方をみると綺麗な周期的な走りをしていることがわかる。だから馬の走り(歩様)にも振動数がある。この話は以前にも取り上げたが、振動数という観点で再度吟味したい。常歩(walk)は
頭
④ ②
③ ①
番号は動かす四肢の順序である。4節でもとに戻る周期運動である。
速歩(trot)は
頭
① ②
② ①
二節で元に戻る周期運動である。対角線上にある二肢が同時に動くので「斜対歩」という。
駈歩(canter)は、左右の対称性が崩れた歩様なので、右手前駈歩と左手前駈歩がある
頭
② ③
① ②
右手前
頭
③ ②
② ①
左手前
三節でもとに戻る周期運動である。③のところで馬の四肢とも空中にある。
これらの馬の歩様(Gaits)は三つとも周期運動である。だから振動数は議論できる。
資料によると、馬の走りかたの振動数は
0.04ヘルツから2.08ヘルツ位の幅があり(制止は勿論0ヘルツ)、面白きことに、0.79ヘルツ(47回/分)で、常歩から速歩に移る。また1.81ヘルツ(109回/分)で速歩から駈歩に移る。
ヘリオット「猫物語」
ドクター・ヘリオット「猫物語」(JAMES HERRIOT’S CAT STORIES by James Herriot: illustrations by Lesley Holmes)には実にさまざまで個性的な猫が登場する。そして全てのストりーが面白い。しかも挿入されているイラストがなかなか趣味がいい。
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タイトルを列記すると
1.アルフレット お菓子屋の猫
2.オスカー 社交家の猫
3.ポリス 逃げ足が速い猫
4.オりーとジニー うちに来た二匹の子猫
5.エミリー 紳士の家に住みついた猫
6.オりーとジニー 住みつく
7.モーゼス 灯心草の中で見つかった猫
8.フリスタ 死の淵から何度も蘇った猫
9.オりーとジニー 最大の勝利
10.ベスター ボールを拾ってくる猫
こんなに沢山の猫が登場する。
天に昇った「かいばおけ」
春の星座にかに座という星座がある。これが天に昇った「かいばおけ」である。ふたご座の東にある。星座として見ると以下のような図になる。
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実はこの星座は二匹のろばたちは向き合って中央にあるおけからかいばを食べているいう図でもある。中央にあるかいばおけには星々が沢山見える。M44という星団である。この星団の名前はギリシャ語でファトネ(かいばおけ)と呼ばれ、ラテン語のプライセペ(Praesepe)となった(野尻抱影著「星座の話」)。
神話では、これは酒の神バッカスと火の神ヘーファイストとの二匹の馬で、神々が巨神族と戦ったとき、大声でいなないて敵を潰走させた功により、おけ(桶)もろとも星になったそうである。だからPraesepeは天に昇った「かいばおけ」である。
因みのM44という呼び名はメシエのカタログの44番目の天体の意味であるが。メシエはハリー彗星で有名なハリーと同時代の人で、彗星発見をするために邪魔になる彗星と間違えるような広がりを持った天体のカタログを作った。これがメシエのカタログで100ばかりの天体が登録してある。有名なところではM31。これはアンドロメダ銀河である。
Paul Revere(ポール・リビア)
今日のお昼のテレビでPaul Revere(ポール・リビア)が登場した。彼はアメリカ合衆国の独立戦争の英雄で、米国人ならだれもが知っているくらい国民的な英雄であるそうである。 その騎馬像が彼が暮らしたBoston(ボストン)にある。
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番組では、なぜ彼が国民的な英雄であるがを紹介していた。それによれば、当時イギリスの植民地であったボストンを始めとする北アメリカ東地区で、イギリスから独立しようとする動きが起きる。米国の独立戦争である。18世紀のことである。彼はこの戦争に献身する。
その最中、イギリス軍が革命派の武器庫を襲撃する計画があるのを彼や仲間が知った。急いで知らせる必要がある緊急の事態である。ランプの点灯を中継して知らせたが、遠くの味方がこれを確認したかわからない。そこで彼はこの情報を革命派に知らせるべく真夜中に馬を走らせて味方に知らせた。1775年4月18日のことである。ボストンからほぼ西の30kmの所のconcord(コンコード)に武器庫はあった。このエピソードは戦争の帰趨にかなり重要らしく、このことで彼はこの独立戦争の英雄となった。詩にも謳われている。
詩
この当時は馬が情報伝達の強力な手段であったわけである。