ビザンチィン帝国とルーマニア

表題の「ビザンチィン帝国とルーマニア」のどちらも中央ヨーロッパにあった帝国であり、現在もある国である。そして二つともローマに関係が深い。

われわれはとかくヨーロッパと言うと西欧に目をむけがちであるが、中央ヨーロッパの考古学や歴史に触れてみると中央ヨーロッパはヨーロッパの先進地域であったことがわかる。

ビザンチィン帝国は紀元4世紀にローマ帝国が西と東に分裂したときの東のローマ帝国である。コンスタンティノーブルを帝都にキリスト教を国教とするギリシャ語を話す「ローマ帝国」であった。西のローマ帝国が5世紀にはさっさと滅亡してしまった後は唯一のローマ帝国としてその後一千年も生き延びた。最盛期にはヨーロッパで最も栄えた都がコンスタンティノーブルであった。常にローマを意識した帝国であった。

ルーマニアも面白い。ルーマニア(Romania)は「ローマ人の国」を意味する。中央ヨーロッパで唯一ラテン系の言葉を話す国である。ルーマニアもローマ帝国の属州になったことがあるがどのようにしてこのような言語になったかは興味深い。ルーマニアの歴史は紀元3世紀から紀元13世紀あたりの一千年は不明な点が多い由。このように時代にビザンチィン帝国との交流があったのかもしれない。

M51-ULS-1b:最初の銀河系外惑星(候補)

われわれの銀河系には沢山の惑星(太陽系外惑星)が発見されているが、表題のM51-ULS-1bは銀河系外(われわれの銀河系の外にある)惑星の最初のものになるかもしれない。M51は猟犬座の方向に8.6メガパーセク(28光年)のところにある有名な子持ち銀河である。

この銀河にあるX線を出している恒星(中性子星またはブラックホール)の伴星がM51-ULS-1bである。この惑星がX線源を横切るときに僅かにX線の強度が落ちる。この現象を見つけて惑星(候補)の発見になった由。

この惑星は木星の半径の0.7倍程度の大きさを持つ。星が水素の核融合を初めるためには質量の下限があり太陽の100分の1程度だとされており、これより質量が大きいと自ら光る恒星になる。木星は太陽の1000分の1程度の質量しかないので恒星になれない。M51-ULS-1bもその程度の質量だと思われる。それで惑星だと推測したものである。

 

RawTherapee: 色体系Labによる画像加工

RawTherapeeというフリーの画像加工のソフトがある。なかなか優秀なものでWindows, MAC, Linuxでも使える。写真の加工に愛用している。

コンピュータの世界では画像のピクセル毎のカラーはRGBの値を指定することでできる。このRGB(各々8ビットであると値の範囲は0~255)の値と色名との関係はよく調べられている。例えばローヤルブルー(royalblue)は各値がR:65 G:105 B:22である。これはコンピュータの世界の色表現である。

ヒトの目の特性に基づく色表現がある。その1つが表題のLab体系である。Labの詳細はここで。LabはRGBと同じように色を3つの要素(だから立体)で指定する。それがLとaそしてbである。Lは色の明度(明るさ)、aは純緑から淡い緑そして灰色を経由して緑の補色である淡い赤、純赤と変わる補色軸であり、bは純青から淡い青そして灰色を経由して青の補色である淡い黄、そして純黄にいたる補色軸である。

RawTherapeeでは画像全体を一様にL(明度)をシフト、a(緑・赤値)をシフト、b(青・黄値)をシフトさせる機能のほかに、部分的にこれらの値をシフトさせる機能もある。

L軸では陰の部分のみを明るくするといったことができる。つまりL = f(L)、元のLの関数としてLの値を更新できる。同様にa = f(a)、つまり元の緑・赤値の関数として緑・赤値を更新できる。

オリジナルの画像
赤領域を強調
緑領域を強調

同様にb = f(b)も用意されている。

このようなことが出来るのであれば、「明るい領域の彩度を弱くしたい」つまりa = f(L)も期待できるが何故かRawTherapeeにはない。その代わり、マンセル色体系(色相(hue)、明度(value)、彩度(chroma))の表現による変換関数が豊富に用意されている。上の要望では例えばc = f(v)の関数を使えばよい。

このようなことができるのがRawTherapeeである。

オリオン星雲(M42)を見つけよう

冬の星座として顕著なオリオン座にM42と名づけられた星雲がある。この星雲は恒星を作る材料である物質が豊富にありそれらが最近誕生した若く明るい恒星の光を吸収して輝いていたり光を遮蔽したりして複雑な輝きの分布を示す星雲である。

大きな望遠鏡で見るとこんなふうに見える。鳥が飛んでるように見える星雲だ。

この星雲のオリオン座中の場所はこれで。

超新星爆発「木に記録か」:年輪の炭素14濃度が急上昇

朝刊の記事のタイトルである。

太陽系の近くで過去にあった超新星爆発の影響を地球の木が記録している可能性があるという話。米国コロラド大学の研究者たちの発見である。

コロラド大学のロバート・ブレーケンリッジ博士たちは古い木の年輪に含まれている放射性元素(炭素14)を調べた。年輪に含まれる炭素14が急上昇する例をいくつか見つけた。これは木が光合成をする際に大気から吸収した炭酸ガスにこの炭素14が沢山あった年代があったことを示唆している。

超新星爆発との関連を見ると南天のほ座の方向約815光年の先ある恒星が1万3000年前に起こした超新星爆発(現在は超新星残骸と中心なる中性子星によるVelaパルサーとして観測されている)を初め4例は炭素14の急上昇と対応関係があるとの由。

炭素14の上昇は太陽フレアでも起こるが博士は超新星爆発との関連も調べる価値があると述べている。

 

放送大学構内の秋

昨日は天気がよかったので東北大学片平キャンパス構内にある放送大学の建物(旧東北大学理学部生物棟)の周辺の秋をカメラに収めた:

紅葉と古めかしい建物

 

光と影そしてブナ
紅葉の写り込み

砂丘の動力学:砂丘はお互いに「コミュニケーション」している

砂の集合体は面白い性質を持っている。砂時計がそのよい例である。

Newscientistにあった記事であるが、その砂の集合体である砂丘が動く機構の話題である。

ケンブリッジ大学の研究者たちは実験でこの機構を調べた。実験で使った装置は「dune ‘racetrack’」と呼ばれているものである。回転する円筒型の水槽中に砂丘を見なした同じ大きさの砂の塊を二つ離して置き、装置を回転(水も回転運動をする)してこれらの塊の動きを観察する。

水は粘性があるので回転槽よりゆっくりと回転する。だから回転槽に乗ってみると水は回転槽の反対方向に回転する流れを作る。この流れで二つの砂丘は移動する。この二つの砂丘の移動の様子をカメラで撮影した。この動きが面白い。

最初のうちは上流側にある砂丘が下流側にある砂丘に近づく動きをみせるが、徐々に上流側にある砂丘の接近速度が落ちて下流側にある砂丘と同程度になる。さらに観察すると今度は下流側の砂丘が上流側の砂丘から離れる動きをする。この動きは長く続き、二つの砂丘が180度も離れるまで続く。ここが平衡点らしい。このような動きは上流にある砂丘がその下流に作る乱流によるものと考えられている。

砂丘群の動きは個々に砂丘がかってに動くのではなく、お互いに相互作用をしながら動いているわけである。このようなメカニズムが砂丘が作りだす見事な波型パターンの形成に関わっていると研究者たちはみている。

 

 

ウクライナと古ヨーロッパの考古学

われわれの関心があまりないがウクライナや現在のブルガリア、ルーマニア、そしてハンガリーなどの古ヨーロッパと呼ばれている地域の考古学が面白い。

面白いのは一つにはこの地域はインド・ヨーロッパ語族の発祥の地かもしれないことである。東は古インド語のサンスクリットから西の古英語まで共通の起源となった言語インド・ヨーロッパ祖語があったと考えられているがその起源の問題でこの地域が注目されている。紀元前4000年ごろの話である。

もう一つは乗馬の起源である。この地域の考古学遺跡から大量の馬の骨が見つかっている。野性の馬はもちろんであるが多くの証拠から家畜化された馬のものも大量に出土する。この地域で最初の馬の家畜化が始まったと考えられている。しかも乗馬の習慣が始まったのもこの地域であることが分っている。乗馬の最初は先行して家畜化されていたヤギやウシを馬に乗って管理するためだったと思われている。

乗馬の習慣を持った人々がその機動性を生かして様々な方面に移動・定住することによってその人たちが話していた言語を拡げたのではないかというシナリオが考えられている。このシナリオに従えば乗馬の習慣を持った人々が話していた言語がインド・ヨーロッパ祖語であるということになる。この言語が拡散・方言化することでインド・ヨーロッパ語族ができあがったことになる。

こんな壮大なストリーが生まれるのが「ウクライナと古ヨーロッパの考古学」である。紀元前4000年ごろのこの地域の考古学資料を使ってこのような視点を詳論した”The Horse the Wheel and Language”(David W. Anthony著)が面白い。