方位の十二支

十二支は、年の数え方、一年の間の月の唱え方、一日の時刻の唱え方など時間に関する領域で使われているが、方位に関してもまた十二支が現れる。
方位では
真北 子
真南 午
真東 卯
真西 酉
を「四正」(しせい)とし、それぞれの「四正」の間には、「丑」「寅」が東北間に、「辰」「巳」が南東間に、「羊」「申」が南西間に、「戌」「亥」が北西間に配当されている。これが方位の十二支である。纏めると以下の図のようになる。

方位の十二支
方位の十二支


この「方位の十二支」は地球の南北に引いた経線を「子午線」と呼ぶなど現在でも使われている。
ところで、これらの十二支の起源について考えてみる。一年の間の月の唱え方に用いられたのが最初ではないかと思われる。この十二支は最初は一年を十二ヶ月として季節の変わり目や年中行事に因んで付けた符号だったのだろう。この時点では十二支と動物との対応はなかった。古代の人々にとって一年の季節変化は一日の時間のサイクルの次に、時間のサイクルが容易に観察できた循環的な現象であったはずである。この循環的な時間の流れに付けたのが「月の十二支」である。これが最初の十二支だろう。
一日のサイクルはもちろん一日の太陽の動きである。これも容易に観察できたはずである。一日の内で太陽がどの方角にあるかが一日の時刻である。だから、時刻に十二支を対応させるためには方位の十二支が「月の十二支」の次に案出されたはずである。
「月の十二支」から「方位の十二支」が案出されたプロセスを探るのはなかなか難しい。単に陰陽五行説によった観念的なものであったのかもしれない(吉野裕子著「ダルマの民俗学」)。または、なにか天体現象などによるのかもしれない。いずれ調べてみることにしたい。
「年の十二支」は木星(周期11.86年で太陽の廻りを一周する)の天空上の年ことの位置によるとしているが、観念上の十干十二支が考えられたあとに後付られたように思われる。

ヘリオットの「動物家族」

ドクター・ヘリオットの「動物家族」(集英社文庫:2002)には馬の話が二編ある。
一つは「馬の口からもらった教訓」、もう一つは「班点ひとつふたつの悩み」である。全編が英国ヨークシャーの田舎で獣医をしているドクター・ヘリオットの日常に出会った動物・人・自然をエッセイ風に描いたものであるが、この二編も登場する動物は馬であるが同じ雰囲気がある。
「馬の口からもらった教訓」は
最初に農村の風景から「引き馬」が無くなってしまったこと。ヘリオットはこの目撃者である。馬は沢山いたころに経験したことを思い出して一つ話が始まる。
ヘリオットが17才のとき、獣医科大学の学生だったときのはなしてある。馬の病気の講義で「腱鞘軟腫」(オラゼン)、「蹄軟骨化骨症」、「管骨瑠」「蹄軟骨瑠」などの専門的な講義を受けてなんとなく馬のことは解ったような気分になり、しかも新品の乗馬ジャケットを着込んで町を歩いていると止まっている荷馬車に出会う。よせばよいのに、ヘリオットはこの馬に近づく。ここで大騒動が起きる。
「班点ひとつふたつの悩み」は
ヘリオットが田舎の獣医として活躍してることの話。彼が朝食を終えたときに、ケトルウエルさんから電話があり、馬の一頭に発疹が出てしまった由。話から蕁麻疹(じんましん)であろうと判断できた。だったら、治療の方法もはっきりしているし、新薬も入手してあるので楽勝だなとおもい、診療で出かけた。現場に行ってみると、それは立派な馬である。直ぐに新薬の注射をする。用心のために従来使っていた薬も注射。ところが馬は震えだし、ついには藁の上に倒れてしまった。目を閉じて死んでしまったようだ。さあ大変。
「動物家族」はそのほか羊、牛、犬などが登場する話がある。