馬の温泉

手元にある飯島裕一著「温泉の医学」の中に馬の温泉治療について書いてあった。古い本などで今でもそうなっているか分からないが、面白いので紹介しておく。
場所は福島県いわき市で日本中央競馬会・競走馬総合研究所磐城支部である。馬の脚の腱炎(けんえん)、関節炎、筋肉痛、骨折などの治療・療養に温泉を取り入れている。入院治療した75%が”職場復帰”しているそうで、かなりの効果があるらしい。
馬の温の温度は摂氏38から40度と温め、入浴時間は15分から20分程度、ぬるい湯に脚だけ浸けて心臓の負担をかけねいようにするそうだ。シャワーをかけることで「打たせ湯」の効果を試している。気持ちはよくて、あくびをしたり、居眠りをする馬もいるそうだ。
馬も最初は温泉が怖いらしく、最初は恐怖のために震えたり、鼻息も荒く抵抗するそうだ。でも、1週間もすると慣れる。温泉療養の期間は平均で約140日である。羨ましいくらいのんびりとした療養である。

「馬の尾にいばらのかかる枯野(かれの)哉(かな)」(蕪村)

馬を手の内に入れる

インストラクラに「馬を手の内に入れる」ようにと言われる。

Alios Podhajsky”The complete Training of Horse and Rider”のなかで”The horse steps into the rein”が該当する言葉かなと思われる。この言葉がでる章では”collection”(まとめる)を説明している。馬の後肢が前方に移動してこの脚で体重を支えるようにすると頭が上がり前肢が自由になる。
この状態を馬が”collect”されたというし、「馬を手の中に入れた」ことになる。このためには、後肢が快活に動く必要があり、乗り手の脚による扶助が決定的に必要になる。手綱がきちんと張れていないと、せっかく手に入れた馬を逃してしまう。この点に手綱(rein)の役割がある。この本でも強調されているが、馬の頭を上げるために、手綱を引っ張ることではダメである。あくまでも後肢が前方に来ることが大事である。

「こがらしやひたとつまづく戻(もど)り馬(うま)」蕪村