ウクライナと古ヨーロッパの考古学

われわれの関心があまりないがウクライナや現在のブルガリア、ルーマニア、そしてハンガリーなどの古ヨーロッパと呼ばれている地域の考古学が面白い。

面白いのは一つにはこの地域はインド・ヨーロッパ語族の発祥の地かもしれないことである。東は古インド語のサンスクリットから西の古英語まで共通の起源となった言語インド・ヨーロッパ祖語があったと考えられているがその起源の問題でこの地域が注目されている。紀元前4000年ごろの話である。

もう一つは乗馬の起源である。この地域の考古学遺跡から大量の馬の骨が見つかっている。野性の馬はもちろんであるが多くの証拠から家畜化された馬のものも大量に出土する。この地域で最初の馬の家畜化が始まったと考えられている。しかも乗馬の習慣が始まったのもこの地域であることが分っている。乗馬の最初は先行して家畜化されていたヤギやウシを馬に乗って管理するためだったと思われている。

乗馬の習慣を持った人々がその機動性を生かして様々な方面に移動・定住することによってその人たちが話していた言語を拡げたのではないかというシナリオが考えられている。このシナリオに従えば乗馬の習慣を持った人々が話していた言語がインド・ヨーロッパ祖語であるということになる。この言語が拡散・方言化することでインド・ヨーロッパ語族ができあがったことになる。

こんな壮大なストリーが生まれるのが「ウクライナと古ヨーロッパの考古学」である。紀元前4000年ごろのこの地域の考古学資料を使ってこのような視点を詳論した”The Horse the Wheel and Language”(David W. Anthony著)が面白い。