ドクター・ヘリオットの「動物家族」(集英社文庫:2002)には馬の話が二編ある。
一つは「馬の口からもらった教訓」、もう一つは「班点ひとつふたつの悩み」である。全編が英国ヨークシャーの田舎で獣医をしているドクター・ヘリオットの日常に出会った動物・人・自然をエッセイ風に描いたものであるが、この二編も登場する動物は馬であるが同じ雰囲気がある。
「馬の口からもらった教訓」は
最初に農村の風景から「引き馬」が無くなってしまったこと。ヘリオットはこの目撃者である。馬は沢山いたころに経験したことを思い出して一つ話が始まる。
ヘリオットが17才のとき、獣医科大学の学生だったときのはなしてある。馬の病気の講義で「腱鞘軟腫」(オラゼン)、「蹄軟骨化骨症」、「管骨瑠」「蹄軟骨瑠」などの専門的な講義を受けてなんとなく馬のことは解ったような気分になり、しかも新品の乗馬ジャケットを着込んで町を歩いていると止まっている荷馬車に出会う。よせばよいのに、ヘリオットはこの馬に近づく。ここで大騒動が起きる。
「班点ひとつふたつの悩み」は
ヘリオットが田舎の獣医として活躍してることの話。彼が朝食を終えたときに、ケトルウエルさんから電話があり、馬の一頭に発疹が出てしまった由。話から蕁麻疹(じんましん)であろうと判断できた。だったら、治療の方法もはっきりしているし、新薬も入手してあるので楽勝だなとおもい、診療で出かけた。現場に行ってみると、それは立派な馬である。直ぐに新薬の注射をする。用心のために従来使っていた薬も注射。ところが馬は震えだし、ついには藁の上に倒れてしまった。目を閉じて死んでしまったようだ。さあ大変。
「動物家族」はそのほか羊、牛、犬などが登場する話がある。