似たような成句に「御の字」というものがある。落語の「大工調べ」(古典落語:小さん集)を読んでいたときに出会った言葉である。
落語では
与太郎が家賃を一両二分と八百文もためてしまって大家に大工道具をもっていかれてしまった。仕事ができたのでこの借金を払って大工道具を取り返そうとする。棟梁が手元に一両二分しかなく、残りの八百文をどうするか。大工の与太郎とその棟梁の政五郎の会話である(二分は二分ノ一両、八百文は五分ノ一両)。
「じれッてなあこの野郎、八百足りねえと、こういうのか」
「あッそうだ、いやあ棟梁、勘定がうめえな」
「張り倒すぞ、この野郎。一両二分と八百ッとこィなあ、八百持ってって言い訳するんじゃァねんだ、一両二分持ってくんだい、八百ぐれぇおんの字だよ」
「なんだ、おんの字てえなあ」
この後の政五郎の説明はなにかよくわからないが、「(一両二分持って行けば)、八百文足りなくても十分だ」だという意味で「御の字」を使っている。