シェイクスピアと馬

ある研究者によれば、「同時代の全作家のなかでシェイクスピアだだ一人だけが拍車の不当な使用と残酷さと愚かさに気づいてた」とシェイクスピアが馬に大きな関心を持っていたという。これに対して木下順二は「シェイクスピアの世界」の中で辛口の批判をしている。同氏自身は年季の入った乗馬家で、馬に関するエッセイも書いている(「すべて馬の話」)。

その研究者はシェイクスピアの全作品の中で馬に言及している代表例として6例を取り上げている。最も専門的な言及は「ヘンリー四世」の中のセリフで馬つなぎ場になっている宿屋の内庭で朝たちの荷運び人夫が馬丁に呼びかけるもので、「荷馬の鞍叩いといてくれ。鞍の前橋(まえわ)に少し毛を詰めてくれ。かわいそうに痩せ馬め、肩のところにとんでもない鞍傷(あんしょう)を起こしているからな」である。

今日の我々がこのセリフを聞くと、シェイクスピアは馬に詳しかったように感ずるが、馬が交通・運搬の主な手段であった時代であれば、上のような会話は日常的なものであったと思う。木下順二もそのことを指摘してる。

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