昨日の河北新報の夕刊に遠野で開かれた本州唯一の乗用馬の競り市の様子が載った。一歳から五歳までの31頭が競りに掛けられて24頭が競り落とされた。平均で一頭あたり90万円程度になるそうだ。最高は301万円。遠野の乗用馬飼育でも後継者問題は大きいとの話である。
ところで遠野と言えば、オシラさまが連想で出てくる。このオシラさまはお蚕の神様であるが、馬の守り神でもある。
このオシラさまと同じような神さまが道教にもある。これが、「馬頭娘」である。「蚕女」とも言うから基本的な性格は、お蚕に関連する神であるが、馬とも縁がある。どんな形で縁があるかは以下のストーリーで分かる(窪徳忠著「道鏡の神々」):
「四川省地方に親娘三人の家庭があった。あるとき、突然に父親が賊にさらわれて行方不明になった。娘は心配のあまり食事も喉を通らなくなった。心配した母親は、父親を無事に取り戻してくれた人に娘を嫁にやると公言した。すると、その家で父親が可愛がっていた馬が突然に綱を切ってどこかにいってしまった。
数日後、その馬が父親を乗せて帰ってきた。がその馬はその日からかいばも喰わず、娘がそばを通るたびにいななきあばれる。不審に思った父親が母親に事情を聞くと、『娘を嫁にやる』と言ったことが判明。しかし、父親は馬は人でないとこれを無視する。と馬はますます暴れ手に負えなくなる。遂に父親はこの馬を殺してしまい、その皮を庭にさらしておいた。
ある日、娘がそのそばを通りかかると、馬の皮はパッとおどりかかって娘を巻き込むと、そのままどこかに飛んでいってしまった。十日ほど後、桑の木の上にひっかかっている馬の皮が発見されたが、娘は蚕(かいこ)となって、桑の葉を食べ、糸をはき、繭(まゆ)を作っていた。これが蚕女である。」
四川省では馬の皮をきせた女性の像をつくって多くの道観においてあるが、その女性像が「馬頭娘」であり、人々は蚕の豊作を祈願したそうだ。