日本馬術連盟(JEF)公認馬場馬術課目

乗馬クラブの中に日本馬術連盟(JEF)公認馬場馬術課目のA2課目のライセンスを持っている人やライセンス取得に挑戦してる人がそれなりいる。このA2課目がどうような位置づけにある課目なのか調べてみた。

日本馬術連盟の現在の課目は平成25年に改定になったもので

Aコース(A1, A2, A3, A4, A5)

Lコース((L1, L2)

Mコース(M1, M2)

Sコース(S1, S2)

と難易度の順に4つのコースがある。Aコースはこれもほぼ難易度の順にA1,A2,A3,A4,A5の5つの課目が設定されている。各コース、課目の詳細はここにある。

AコースA2課目が最初に述べた「A2」課目である。A2課目の詳細な解説はここにあり、A3課目の解説はここにある。どちらも同じ著者であるが丁寧な解説でとても役に立った。

A1課目は日本乗馬倶楽部の3級に相当するように思えた。AコースはJEFの競技会では実施せず、要綱では「経験の浅い人馬の教育のために積極的に活用していただきたいと考えております」とコメントしている。

筆者にはAコースで十分であるが、Aコースの中では印象としてA3課目が左右の駈歩を数歩の常歩を入れて切り替える(シンプルチェンジ)が入っていて面白い。

 

騎乗時でのムチの持ち替え方

これも乗馬の話である。

乗馬では左手前ではムチは左手に持ち、右手前では右に持つ。ムチの左右の持ち替えは「斜め手前変換」でX点あたりで行う。どのようにして持ち替えるか?これが今日のテーマである。

“Horse and Rider”(Alois Podhajsky)を読んでいたらスペイン乗馬学校の方法が紹介されていた。通常の小勒(しょうろく)のばあいは以下のようにする:

【左から右に持ち替える】

  1. 右の手綱を左に預ける。右の拳は自由になる。
  2. 左の拳を外側から捻ってその拳の小指が上になるようにする。ムチは上を向いている。
  3. その状態で右の拳を親指が下になるようにして左の拳に揃える。つまり左の拳の小指と右の拳の親指が接して並んだ格好になる。
  4. 右の拳でムチを掴み、右の拳をムチと一緒にそのまま馬の頭越しに移動して正位置に戻す。ムチは右拳にあり下を向いている。
  5. 左に預けておいた手綱をもらい右拳でムチと一緒に握る。

後肢旋回(turn on the haunches)と前肢旋回

久ぶりに乗馬の話題である。

馬をその場で360度または180度回転させる手法に後肢旋回(turn on the haunches)と前肢旋回がある。

●後肢旋回(360度)

左手前であると左回転(左が内側)、右手前であると右回転(右が内側)させる。要は小さい半径の「巻き乗り」である。

扶助は内方手綱を開いて馬を回転方向に誘う。外方手綱で馬を支える。内方脚は腹帯の直ぐ後で馬に推進力をあたえる。外方脚は腹帯のやや後で強く圧迫して回転半径が小さくなるようにする。馬の四肢がリズムを保って動くことが肝要。

●前肢旋回(180度):外拉致を使って

前肢を軸とした180度回転である。外拉致を使う。左手前では右回転(右が内側)、右手前であると左回転(左が内側)させる。

扶助は内方手綱を開いて馬を回転方向に誘う。外方手綱は押し手綱で馬を支える。内方脚は腹帯の直ぐ後で強く圧迫して馬に回転あたえる。外方脚は腹帯のやや後で回転運動を調節する。馬を後退させてはならない。

馬は鏡に映った自身を認識できる

Newscientistにあった記事のタイトルである。

馬は鏡に映った自身の姿を認識でき、更にそのイメージから顔が汚れていて拭く必要があるかとかいう情報を得ているように見える。こんな結果をイタリアのピサ大学のPaolo Baragliが見つけた。

顎に色でマークを着けた14頭の馬の内11頭は鏡に映った自身の顔をみてそのマークを拭おうとした。これは鏡に映った自己認識ができる霊長目以外では馬が唯一の動物ということになる由。

 

ウクライナと古ヨーロッパの考古学

われわれの関心があまりないがウクライナや現在のブルガリア、ルーマニア、そしてハンガリーなどの古ヨーロッパと呼ばれている地域の考古学が面白い。

面白いのは一つにはこの地域はインド・ヨーロッパ語族の発祥の地かもしれないことである。東は古インド語のサンスクリットから西の古英語まで共通の起源となった言語インド・ヨーロッパ祖語があったと考えられているがその起源の問題でこの地域が注目されている。紀元前4000年ごろの話である。

もう一つは乗馬の起源である。この地域の考古学遺跡から大量の馬の骨が見つかっている。野性の馬はもちろんであるが多くの証拠から家畜化された馬のものも大量に出土する。この地域で最初の馬の家畜化が始まったと考えられている。しかも乗馬の習慣が始まったのもこの地域であることが分っている。乗馬の最初は先行して家畜化されていたヤギやウシを馬に乗って管理するためだったと思われている。

乗馬の習慣を持った人々がその機動性を生かして様々な方面に移動・定住することによってその人たちが話していた言語を拡げたのではないかというシナリオが考えられている。このシナリオに従えば乗馬の習慣を持った人々が話していた言語がインド・ヨーロッパ祖語であるということになる。この言語が拡散・方言化することでインド・ヨーロッパ語族ができあがったことになる。

こんな壮大なストリーが生まれるのが「ウクライナと古ヨーロッパの考古学」である。紀元前4000年ごろのこの地域の考古学資料を使ってこのような視点を詳論した”The Horse the Wheel and Language”(David W. Anthony著)が面白い。

「洗濯板」から「クッション」へ:「ハミ受け」の効用

内方姿勢と隅角(ぐうかく)通過」の記事で「ハミ受け」のできた馬は乗りやすいと述べた。その理由が表題のように「『洗濯板』から『クッション』へ」である。

「ハミ受け」のできた馬は馬体全体が丸くなる。背中も丸くなる。このことによって背中のクッション性が大きくなる。「洗濯板」のように硬かった背中が「クッション」のように柔軟になりバウンドを吸収してくれるので乗り手にとっては揺れの小さい馬となる。

内方姿勢と隅角(ぐうかく)通過

乗馬の話題である。

馬場レッソンで隅角(ぐうかく)通過の課題がある。

長方形の馬場の四隅を直径6メートルの4分1の弧を描くように馬を進ませる課題である。このとき馬に内方姿勢を取らせて曲がらなければならない。だから隅角(ぐうかく)通過は馬に内方姿勢を求めるよい機会である。これには乗り手の手綱操作だけでなく乗り手のバランスのとり方が必要となる。しかし、多くに見られる間違いは隅角(ぐうかく)通過を深く入りたいために、内方姿勢を放棄して馬を外に向けてしかも乗り手のバランスも崩れてしまう乗り方をしてしまうことである。

レッスンでは
①隅角(ぐうかく)周辺にある蹄跡は予め消しておく。馬は異常に蹄跡に固執するので、隅角周辺の蹄跡はレッスンの邪魔になる。
②隅角に予めブロックをおき、通過の目安とする。馬も乗り手も無理しないで済み、内方姿勢を維持しやすい。

どうしてこのようなことを書いたか。
バウンドの大きな駈歩をする馬に乗っていると乗り手の尻が突き上げられ鞍に「ドスン」と落ちる乗り方になってしまう。これを解決する方法を考えていた。

バウンドの大きな駈歩をする馬に乗るときの上の問題の究極の解決方法は「その馬にハミ受けをさせて乗る」というコメントにであった。これだと思った。確かにハミ受けのできた馬の揺れはすごく小さい。ハミ受けと内方姿勢は繋がっている。だから内方姿勢の徹底が必要である。隅角通過、輪乗り、駈歩発進で内方姿勢を徹底する必要がある所以である。

馬に乗って球技?:3000年前の中央アジア

3000年前中央アジアで馬に乗っていた人が球技をしていた可能性があることが分ったという今日の朝刊の記事である。しかし馬に乗りながら球技をしていたかは不明との由。

チューリヒ大学の研究者たちは新疆ウィグル自治区の町ドルファンの近郊にある遺跡で見つかった革製のボールを解析した。これらのボールは直径が7.4~9.2 cmで2900~3200年前のものであることがわかった。画像はここ

三個のボールの内二個は埋葬された人が乗馬の習慣を持っていたことが別の遺物で確認されている。研究者たちはこの二つのボールはこの乗馬の習慣を持っていた人物が使っていたものだと見ている。

しかしこの人物が馬に乗りながらこのボールを扱っていたことを示す遺物は確認されていないという。