4500年前の墓からロバの骨格

久しぶりに眺めたNew Scientistsにあった話題。

青銅器時代の初期(いまから4500年前ごろ)にシリアの人々は野生ロバ(英語ではass)と家畜化されたロバ(英語ではdonkey)との雑種をロバの品種改良の一環として行っていたことが分かったという話である。

考古学的な発掘でこの地方の豪族の墓から馬属の全身骨格がたくさん見つかった。この地方に馬が導入されたのはこの時期より500年後のことであることが分かっているので、この全身骨格は何だということになった。

パリ大学の研究者たちはこれらの骨のDNA解析からこれらの馬属は家畜化されたロバ(donkey)と野生ロバ(ass)との雑種であることを突き止めた。研究者たちはこの雑種はより強靭でより速く走る家畜ロバの生産が目的だったのではとみている。

この地方に馬が導入されると上のようなロバの品種改良は終わってしまった。

 

乗馬のための箴言(?)

  • 馬に乗るときはリンボー・ダンス(棒くぐり)の姿勢をとる。
  • 馬は脚で操縦する。手綱は馬の形を整えるためにある。
  • 内方姿勢とは馬をバナナのような形にすることである。
  • そのためには手綱で馬を内向きにすると同時に脚で馬を外に押す。
  • 輪乗りはこの内方姿勢を保持した走り。
  • 駈歩は内方姿勢で馬の前内肢が前に踏み込んで始まる。
  • 内方姿勢で馬の後肢が外にドリフトするときは外側脚で押す。
  • 手綱操作は脇を閉じて。さもないと馬は姿勢を変えない。
  • 鐙は踏むものではなく、足の指で噛むものである。
  • 脚の扶助は馬を前に押し出すように使う。
  • バランス・バックはより低い棒くぐりの姿勢。
  • 馬を丸くするときはこのバランス・バックで乗る。
  • 馬への扶助は馬の「やる気」を引き出すためのもの。

2022年9月

ロバの家畜化7000年前か:背景にサハラ砂漠乾燥化

今朝の新聞の記事のタイトルである。

ウマ属にはウマ(Equus)、シマウマ(Equus Zebra)、野生ロバ(Equus hemionus hemionus)からなっているが。野生ロバが家畜化されたものがロバ(英語:Donkey)である。この家畜化の開始の時代と起源に関わる問題である。

家畜ロバは約7000年前にアフリカ東部で飼いならされた可能性が分かったという記事である。サハラ砂漠の乾燥化が進んだ結果である。

家畜ロバは4000年前ごろユーラシア大陸に拡散。その後中央アジアや東アジアにも独立性の高い集団が発生した。また逆に各地のロバがアフリカに流入した経緯もあった。

ラバはローマ帝国が繁栄した時期に軍事用に雄のロバと雌のウマとの交配でできたものであることも判明した。

 

日本馬術連盟(JEF)公認馬場馬術課目

乗馬クラブの中に日本馬術連盟(JEF)公認馬場馬術課目のA2課目のライセンスを持っている人やライセンス取得に挑戦してる人がそれなりいる。このA2課目がどうような位置づけにある課目なのか調べてみた。

日本馬術連盟の現在の課目は平成25年に改定になったもので

Aコース(A1, A2, A3, A4, A5)

Lコース((L1, L2)

Mコース(M1, M2)

Sコース(S1, S2)

と難易度の順に4つのコースがある。Aコースはこれもほぼ難易度の順にA1,A2,A3,A4,A5の5つの課目が設定されている。各コース、課目の詳細はここにある。

AコースA2課目が最初に述べた「A2」課目である。A2課目の詳細な解説はここにあり、A3課目の解説はここにある。どちらも同じ著者であるが丁寧な解説でとても役に立った。

A1課目は日本乗馬倶楽部の3級に相当するように思えた。AコースはJEFの競技会では実施せず、要綱では「経験の浅い人馬の教育のために積極的に活用していただきたいと考えております」とコメントしている。

筆者にはAコースで十分であるが、Aコースの中では印象としてA3課目が左右の駈歩を数歩の常歩を入れて切り替える(シンプルチェンジ)が入っていて面白い。

 

騎乗時でのムチの持ち替え方

これも乗馬の話である。

乗馬では左手前ではムチは左手に持ち、右手前では右に持つ。ムチの左右の持ち替えは「斜め手前変換」でX点あたりで行う。どのようにして持ち替えるか?これが今日のテーマである。

“Horse and Rider”(Alois Podhajsky)を読んでいたらスペイン乗馬学校の方法が紹介されていた。通常の小勒(しょうろく)のばあいは以下のようにする:

【左から右に持ち替える】

  1. 右の手綱を左に預ける。右の拳は自由になる。
  2. 左の拳を外側から捻ってその拳の小指が上になるようにする。ムチは上を向いている。
  3. その状態で右の拳を親指が下になるようにして左の拳に揃える。つまり左の拳の小指と右の拳の親指が接して並んだ格好になる。
  4. 右の拳でムチを掴み、右の拳をムチと一緒にそのまま馬の頭越しに移動して正位置に戻す。ムチは右拳にあり下を向いている。
  5. 左に預けておいた手綱をもらい右拳でムチと一緒に握る。

後肢旋回(turn on the haunches)と前肢旋回

久ぶりに乗馬の話題である。

馬をその場で360度または180度回転させる手法に後肢旋回(turn on the haunches)と前肢旋回がある。

●後肢旋回(360度)

左手前であると左回転(左が内側)、右手前であると右回転(右が内側)させる。要は小さい半径の「巻き乗り」である。

扶助は内方手綱を開いて馬を回転方向に誘う。外方手綱で馬を支える。内方脚は腹帯の直ぐ後で馬に推進力をあたえる。外方脚は腹帯のやや後で強く圧迫して回転半径が小さくなるようにする。馬の四肢がリズムを保って動くことが肝要。

●前肢旋回(180度):外拉致を使って

前肢を軸とした180度回転である。外拉致を使う。左手前では右回転(右が内側)、右手前であると左回転(左が内側)させる。

扶助は内方手綱を開いて馬を回転方向に誘う。外方手綱は押し手綱で馬を支える。内方脚は腹帯の直ぐ後で強く圧迫して馬に回転あたえる。外方脚は腹帯のやや後で回転運動を調節する。馬を後退させてはならない。

馬は鏡に映った自身を認識できる

Newscientistにあった記事のタイトルである。

馬は鏡に映った自身の姿を認識でき、更にそのイメージから顔が汚れていて拭く必要があるかとかいう情報を得ているように見える。こんな結果をイタリアのピサ大学のPaolo Baragliが見つけた。

顎に色でマークを着けた14頭の馬の内11頭は鏡に映った自身の顔をみてそのマークを拭おうとした。これは鏡に映った自己認識ができる霊長目以外では馬が唯一の動物ということになる由。

 

ウクライナと古ヨーロッパの考古学

われわれの関心があまりないがウクライナや現在のブルガリア、ルーマニア、そしてハンガリーなどの古ヨーロッパと呼ばれている地域の考古学が面白い。

面白いのは一つにはこの地域はインド・ヨーロッパ語族の発祥の地かもしれないことである。東は古インド語のサンスクリットから西の古英語まで共通の起源となった言語インド・ヨーロッパ祖語があったと考えられているがその起源の問題でこの地域が注目されている。紀元前4000年ごろの話である。

もう一つは乗馬の起源である。この地域の考古学遺跡から大量の馬の骨が見つかっている。野性の馬はもちろんであるが多くの証拠から家畜化された馬のものも大量に出土する。この地域で最初の馬の家畜化が始まったと考えられている。しかも乗馬の習慣が始まったのもこの地域であることが分っている。乗馬の最初は先行して家畜化されていたヤギやウシを馬に乗って管理するためだったと思われている。

乗馬の習慣を持った人々がその機動性を生かして様々な方面に移動・定住することによってその人たちが話していた言語を拡げたのではないかというシナリオが考えられている。このシナリオに従えば乗馬の習慣を持った人々が話していた言語がインド・ヨーロッパ祖語であるということになる。この言語が拡散・方言化することでインド・ヨーロッパ語族ができあがったことになる。

こんな壮大なストリーが生まれるのが「ウクライナと古ヨーロッパの考古学」である。紀元前4000年ごろのこの地域の考古学資料を使ってこのような視点を詳論した”The Horse the Wheel and Language”(David W. Anthony著)が面白い。