年末の歌舞伎「義経千本桜」の三代目「すしや」をテレビで観た。
江戸の庶民は義理と人情の狭間で苦労するといった歌舞伎の場面に自分のことのように涙した。
それを最もよく表現した歌舞伎が「菅原伝授手習鑑」(すがわらでんじゅてならいかがみ)の四段目「寺子屋」であろう。
あらすじはこうだ:
菅原道真の旧臣武部源蔵(だけべげんぞう)夫婦は寺子屋を開いて主君の一子秀才(しゅうさい)をかくまっているが、ついに敵方の平時平方の露見しその首を打たなければならなくなった。たまたまその日に入門した小太郎という子を身代わりに首を打ったがその首実験にきた松王は確かにと鑑定して帰る。喜ぶ夫婦の前に小太郎の母千代が戻って「お役に立ててくださったか」と言い驚く源蔵夫婦の前に再び松王が訪れ、小太郎は自分の子であり管丞相(かんしょうじょう)への報恩のため身代わりに差し出したと本心を語り深い悲しみをみせる。