欧米では裁判官などの職の権威を象徴する職杖(Mace)を持っていることが多い。これは武器としてのこん棒(Mace)と異なった起源を持つように思われる。
“The Horse ,the whell and Language”(David W. Anthony著)を読んでいたら、紀元前5200年~5000年あたりのドニエプル・ドネツII文化(アゾフ海の北のドニエプル川渓谷やドネツ川渓谷で発掘された文化遺構)の墳墓から、磨いた石で作られた「職杖」の柄が発見されている。馬の頭部を模ったものや、十字架状のもので戦闘用とは思えないもので明らかに権威の象徴を示すものである。
ドニエプル・ドネツII文化はヒツジやウシの牧畜に移行した文化で、乗馬の習慣もあったと考えられている。そのような文化の特権階級の墓でこれらの「職杖」の柄が見つかっている。
これらの文化を担った人々の西への侵攻にともなってドナウ川渓谷の古ヨーロッパと呼ばれるところでも同じような「職杖」の柄が見出されるようになる。紀元前4000年あたりのころである。
これらが「職杖」の最も古いもので、これらがヨーロッパに拡がって権威の象徴としての形式となったのであろう。