“The Photobook: A History”(Martin Parr and Gerry Badger)という厚めの本がある。フォトブックの歴史を詳述したものである。その冒頭に出てくるのが”The Pencil of Nature”である。「自然によるスケッチ」とでも訳されるタイトルの写真集である。
この本は写真が挿絵に使われて出版された世界最初の本で、著者は W. H. F. タルボット(William Henry Fox Talbot )である。1844年から1846年にかけて6分冊としてロンドンで出版された。フランスのニセフォール・エスプリが世界最初の写真を撮った1827年から約20年後のことである。
この本ではタルボットが開発したカロタイプ(ヨウ化銀による撮像法)の詳しい説明があり計24枚の写真が手貼りされている。この本は写真の歴史の上で画期的なものでこの本の出版は「本の芸術」上、グーテンベルグの活字の発明以来の画期的な出来事である。
当時は一般の人たちには写真は馴染みがなかったのでタルボットはこんな注を入れている:
この本に挿入されている画像は芸術家のペンのような助けを一切なしに光の作用だけで作られたものである。それらは太陽が画家となつた絵で、誤解する人がいるかもしていないが、何かを模倣したエッチングではない。
この本は分冊毎に販売された。タルボットは続分冊の出版を計画していたようだが、本は商業的には不成功で、計画は6分冊で終わってしまった。
以下画像を紹介する。
挿入されている写真
この写真は写真芸術の潜在的な可能性を示すためにタルボットが選んだという。
シリーズ中唯一人物が映っている写真。露出時間を長くしないと作品にならなかったことが理由の由。
“The Photobook: A History”によれば”Photographs of British Algas: Cyanotype Impression” ( Anna Atkins)が1843年と年代ではタルボットの作品より古いがこちらは個人的な範囲に配布されたパンフレットに近く、フォトブックとしてはタルボットのThe Pencil of Natureが世界最初のものである。