「三分損益法」と日本の音階

「日本の音」(小泉文夫著)の中で日本の音階について詳しく解説されているので纏めておく。

「三分損益法」は楽音の作りかたである:

一本の弦があるとする。この弦が出す音が基本音である。この弦の半分のところを押さえて鳴らすと基本音よりオクターブ高い音が作れる。この基本音とオクターブ高い音の間に音を配置する方法が「三分損益法」である。

  1. 弦を用意する。これが基本音: 1
  2. 弦を三等分して三分の二の長さで音を作る: 2/3
  3. 三分の二の長さの弦を三等分してその三分の一をそれに追加する: 2/3 + (2/3)*(1/3) = 8/9 = (2/3)**2×2
  4. その三分の二の長さで音を作る: (8/9)*(2/3) = 16/27 = (2/3)**3×2
  5. それを三等分してその三分の一をそれに追加する: 16/27 + (16/27)*(1/3) =64/ 81=(2/3)**4x(2**2)
  6. その三分の二の長さで音を作る:(64/81)*(2/3) = 128/243=(2/3)**5x(2**2)

このような手続きを13まで続けると13で基本弦の長さの半分(厳密には半分は作れない)の長さの弦が作れる。これが基本音に対してオクターブ高い音になる。結果を表にすると以下になる。


1 1
2 0.6667 #2/3
3 0.8889 #(2/3)**2*2
4 0.5925 #(2/3)**3*2
5 0.7901 #(2/3)**4*(2**2)
6 0.5264 #(2/3)**5*(2**2)
7 0.7023 #(2/3)**6*(2**3)
8 0.9364 #(2/3)**7*(2**3)*2
9 0.7242 #(2/3)**8*(2**4)
10 0.8324 #(2/3)**9*(2**4)*2
11 0.5549 #(2/3)**10*(2**5)
12 0.7398 #(2/3)**11*(2**5)*2
13 0.4932 #(2/3)**12*(2**6)

長さをグラフにすると:

弦の出す音の振動数は弦の長さの逆数であるのでこれで基本音とそのオクターブ高い音の間の12個の音が作れる(十二律)。

基本音をの音としてこれらの音を五線譜上の近い音のオタマジャクシで表現するとこのようになる:

 

日本で用いられる音階は五音音階である。だから十二律の音の五音が使われる訳である。「日本の音」(小泉文夫著)によれば典型的には四の使い方がある。それらは民謡・わらべうたの音階、都節の音階、筝の音階、そして沖縄の音階である。

「元禄忠臣蔵」は実は塩の争い

直前のブログで吉良上野介義央(よしひさ)の私的な書状公開の話を書いたが、「元禄忠臣蔵」=「赤穂浪士事件」そのものが塩の争いが遠因にあるという話である。

「日本古街道深訪」(泉 秀樹著)によれば現在の愛知県幡豆(はず)郡吉良(きら)町には嘗ては大きな塩田があった。その一つ「富好塩田」を開発したのは吉良上野介義央であった。そこで作られた塩は「饗場(あえば)塩」といった。この塩はにがりが多い「差塩(さししお)」であった。一方赤穂藩も塩の産地でこちらは純度の高い「真塩(ましお)」を生産した。この塩を巡る争いが事件の底辺にあるという。

それにしても、そもそも赤穂浪士たちが「殿のかたき」としなければならなかったのは「殿中事件」に対して不当判定を下した幕府首脳であったはず。不思議な事件である。

悪役にも慈父の顔:吉良上野介の書状きょう公開

今朝の新聞のタイトルである。

愛知県西尾市の博物館「岩瀬文庫」で吉良上野介義央(よしひさ)が娘(つる姫)に宛てた書状が公開されている。

文庫の説明文には

「義央の実像について再考のきっかけになればと願い、毎歳忌(まいさいき/赤穂浪士の襲撃で命を落とした吉良義央の命日法要。12月14日に菩提寺の華蔵寺でいとなまれる)にあわせて特別公開します。幕府の能吏でも芝居の憎まれ役でもない、ただ娘や家族を思う一人の父の姿をご高覧いただけましたら幸甚です。」

とある。

「湯立てかぐら」と火渡り神事

毎年2月11日に薬師堂で行われる火渡り神事で写真のような風景を目にする:

これと同じような神事芸能に「湯立てかぐら」がある。お湯をぐらぐらとにたてその中に笹の葉っぱのようなものを入れてそれをみんなに振り掛ける。それで無病息災や五穀豊穣などを願ったり、その年の吉兆を占うものである。こちらは神社の神事で舞を伴なうと「かぐら」になる。非常に古い日本の神事芸能の一つである。

駈歩をしている馬がT字路にきたら

このブログで馬は「右利き」か「左利き」かを調べた研究結果の紹介をした。
性差があるなど面白い事実が分った。

ところで馬が駈歩をしてT字路に入ってきたら左右どちらの側に曲がり易いのであろうか?

予想としては「左手前」の駈歩では左へ、「右手前」では右に曲がりやすいと考えられるがどうだろうか。

 

「左か右か」:混乱する脳

これは最近のNewScientistの話題の一つである。

多くの人々が「左に行って」「右に行って」という左右の方向を伴なう指示に混乱してしまうという。その問題である。

これらの指示は「前に行って」「後に行って」という前後の方向を伴なう指示に間違いなく対応できることを考えると対照的である。

これは人間の体がほぼ左右対称にできていることと関係するのかもしてない。また人の「歩く」や「走る」といった歩様も左右対称なことも左右の認識を曖昧にしているのかもしれない(馬の駈歩のような左右非対称歩様を持っているとどうだろうか)。

記事ではある人は

幼いころ右親指をしゃぶる癖があり大人になっても左右の親指の形が違っていてそれを手掛りの左右の問題を処理できているそうである。

またある人は

親指と人差し指を90度に開いたときに文字Lを作る方が左である。これを使う。とっさのときに役に立つかなあ。

ビザンチィン帝国とルーマニア

表題の「ビザンチィン帝国とルーマニア」のどちらも中央ヨーロッパにあった帝国であり、現在もある国である。そして二つともローマに関係が深い。

われわれはとかくヨーロッパと言うと西欧に目をむけがちであるが、中央ヨーロッパの考古学や歴史に触れてみると中央ヨーロッパはヨーロッパの先進地域であったことがわかる。

ビザンチィン帝国は紀元4世紀にローマ帝国が西と東に分裂したときの東のローマ帝国である。コンスタンティノーブルを帝都にキリスト教を国教とするギリシャ語を話す「ローマ帝国」であった。西のローマ帝国が5世紀にはさっさと滅亡してしまった後は唯一のローマ帝国としてその後一千年も生き延びた。最盛期にはヨーロッパで最も栄えた都がコンスタンティノーブルであった。常にローマを意識した帝国であった。

ルーマニアも面白い。ルーマニア(Romania)は「ローマ人の国」を意味する。中央ヨーロッパで唯一ラテン系の言葉を話す国である。ルーマニアもローマ帝国の属州になったことがあるがどのようにしてこのような言語になったかは興味深い。ルーマニアの歴史は紀元3世紀から紀元13世紀あたりの一千年は不明な点が多い由。このように時代にビザンチィン帝国との交流があったのかもしれない。

M51-ULS-1b:最初の銀河系外惑星(候補)

われわれの銀河系には沢山の惑星(太陽系外惑星)が発見されているが、表題のM51-ULS-1bは銀河系外(われわれの銀河系の外にある)惑星の最初のものになるかもしれない。M51は猟犬座の方向に8.6メガパーセク(28光年)のところにある有名な子持ち銀河である。

この銀河にあるX線を出している恒星(中性子星またはブラックホール)の伴星がM51-ULS-1bである。この惑星がX線源を横切るときに僅かにX線の強度が落ちる。この現象を見つけて惑星(候補)の発見になった由。

この惑星は木星の半径の0.7倍程度の大きさを持つ。星が水素の核融合を初めるためには質量の下限があり太陽の100分の1程度だとされており、これより質量が大きいと自ら光る恒星になる。木星は太陽の1000分の1程度の質量しかないので恒星になれない。M51-ULS-1bもその程度の質量だと思われる。それで惑星だと推測したものである。

 

オリオン星雲(M42)を見つけよう

冬の星座として顕著なオリオン座にM42と名づけられた星雲がある。この星雲は恒星を作る材料である物質が豊富にありそれらが最近誕生した若く明るい恒星の光を吸収して輝いていたり光を遮蔽したりして複雑な輝きの分布を示す星雲である。

大きな望遠鏡で見るとこんなふうに見える。鳥が飛んでるように見える星雲だ。

この星雲のオリオン座中の場所はこれで。