「戦争に征った馬たち」

表題の「戦争に征った馬たち」(著者:森田敏彦)という著書があることを今日の新聞の書評欄で知った。馬とヒトの出会いは最初は食料としての馬だったと云われている。世界中の遺跡で馬を食料としていた証拠が見つかっている。その次が軍馬である。世界史的にみても、ローマ帝国から両世界大戦まで馬は戦場で「武器」として使われてきた。日本においても、鎌倉時代から太平洋戦争まで馬は戦争目的のために使われていた。
この著書はとくに日本の近代の日露戦争・日中戦争・アジア太平洋戦争で戦地に征った馬たちの運命を全国に残っている「軍馬碑」(全国で950基あるそうだ)を基に調べている。ぼう大な数の馬が「出征」していった。兵士は帰還した人もいたが、帰還した馬はゼロに近い。
軍馬、いわば「動物兵士」を消耗品とした近代の戦争の実相がある。これは「人兵士」の扱いにも通じるものである。

春・夏・秋・冬

現在の日本では一年を春・夏・秋・冬の季節に分ける。何時からいつまでを「春」というのだろうか?これが今日のテーマである。
江戸時代の太陽太陰暦では、天体の月の満ち欠けに合うように「月」の初めとその長さが決められたが、太陽の動きにも合わせるようにした。そのため、「二十四節気」という太陽の動きに基づく節目を太陰暦に導入した。「二十四節気」は
立春(りっしゅん)
春分(しゅんぶん)
立夏(りっか)
夏至(げし)
立秋(りっしゅう)
秋分(しょうぶん)
立冬(りっとう)
冬至(とうじ)
など太陽の動きによる節目である。例えば、冬至は一年の内で南中の太陽の高度が最も低くなる日であるし、逆に、夏至では高度が最も高く日である。
二十四節気では、各「立」と「分」の間に二つの節が入る。
たとえば立春と春分の間には
雨水(うすい)
啓蟄(けいちつ)
の二つの節がはいる。このようにして6X4=24になる。
日本の春・夏・秋・冬はこの二十四節気を基に決められる。すなわち
春:立春から立夏まで
夏:立夏から立秋まで
秋:立秋から立冬まで
冬:立冬から立春まで
となる。立春は二月上旬であるので、実感の季節感からすると、この季節区分は少し前倒しである。だから、「暦の上では、春ですが…」となる。立秋は八月上旬であるので、この事情は秋も同じである。二十四節気は中国起源であるのでもっと緯度の高い北京あたりの季節に対応したものであるという説があるが、秋については、妥当であるが、春は逆センスになる。
僕はこれを以下のように考える。
そもそも天体の運行に基づく暦を作ろうとした文明には四季折々の風物から季節をはかる自然暦の環境が無かった。だから、「立春」などの節も単に観念的なものであったと思う。 ところが、それを輸入した日本には、以前から自然暦の長い伝統があった(本居宣長「真暦考」)。そこで輸入した暦に自然暦の対応をせざるを得なくなった。そこで上のような季節を配当した。これが僕の説である。
因みに西欧では
春:春分から夏至まで
夏:夏至から秋分まで
秋:秋分から冬至まで
冬:冬至から春分まで
となる。こちらの方が日本の季節感にマッチする季節区分である。

世界最長は6.7m

馬の尾は伸びる。足に纏わり付くので切るが、伸ばせば伸びる。伸ばした結果の世界最長記録はなんと6.7mである。アメリカ産のパロミノ(Palomino)種で名前はチヌーク(Chinook)という。

ギネス的馬:ブラバンドとファラベラ

馬には、こんなに重いのかという馬もあれば、こんなに小さいのかという馬もいる。今回はそんな馬を紹介する。題して「ギネス的馬」である。
まず、重量級は、「ブラバンド」(Brabant)。原産国がベルギーであるのでベルギー輓馬(ばんば)(Belgian draft)とも言われる。画像のように巨大な馬である、記録によれば1459kgもあったものもある。1トン以上もある馬である。もっぱらベルギーでは農作業に使われていた。体高は162~170cmと大きい。

Belgian draft
Belgian draft


超軽量級はファラベラ(Falabella)である。体高が40cm、体重は12kgと実に小さい。アルゼンチンのファラベラ家に由来するので、この名前がある。子供が馬に親しむのに丁度良い大きさである。

Falabella
Falabella


これらは、いずれもヒトの目的によった品種改良の結果であるが、馬から見ると迷惑なことかもしれないと、チラッと思った。

馬:世界最古の写真

世界最古の写真の一つに馬が写っている。
世界最古の写真は1827年7月にニセフォール・ニエプス(Joseph Nicephore Niepce)が撮影したフランスのサン・ルゥ・ド・ヴァレンヌ村にあった領地の実験室から眺めた「実験室からの眺め」という写真であるが、ほぼ同じ時にニエプスによって撮影された馬の写真がある。これは風景にある馬ではないが、ニエプスが版画作品を撮影したものである。


正確な日付ではこちらが古いが風景を撮影した「実験室からの眺め」が写真の最古にふさわしい作品のように思われる。露出時間が超長かったので朝日に照らされている壁と夕日に照らされている壁の両方が一枚の写真になっている。

歯槽間縁(しそうかんえん)

馬の歯並びの中で歯のない部分を「歯槽間縁」(しそうかんえん)といいますが、結構な隙間ですのでここにハミを咬ませます。馬の歯並びは
3133
前—-
3133
これは前歯3、犬歯1と続いて、「歯槽間縁」があり、臼歯が3,3と続くわけである。

歯槽間縁
歯槽間縁

この「歯槽間縁」は馬だけの特徴で、これを発見してハミを発明したのはヒッタイト人であると言われている。紀元前2000年ころのことである。だから今から4000年前のことである。4000年間の進化で「歯槽間縁」が生成されたとは考えにくい。
また、ヒトにハミを強制されたことがない「シマウマ」にも「歯槽間縁」はあるらしいので、この間縁はヒト以前の馬に具わった特徴だと考えられる。
一方、馬にとってこの「歯槽間縁」はどんな役割をしているのかは不明である。馬の顔が長くなったためか、単に要らなくなった歯の退化とも考えられる。事実牡馬にはあるが、牝馬には犬歯がない。これは退化だと思う。
ブタの歯並びが哺乳類の基本であるが馬と比べるとブタは
3143
前—-
3143
であるので馬の臼歯は一本少ないことになる。「歯槽間縁」は臼歯一本分より可成り広いし、ヒトなどもブタに比較すると臼歯が一本足らないが、「間縁」はない。

歌川国芳の馬

浮世絵師歌川国芳は渡辺崋山らの蘭学者との交流があり、西洋画の影響も指摘されている作品もある。以下は「近江の国の勇婦於兼」という浮世絵である。遠近法によるリアルな馬が描かれている。

「近江の国の勇婦於兼」
「近江の国の勇婦於兼」


江戸時代の「西洋画」としては、司馬江漢(しばこうかん)が知られているが、国芳にも西洋画の影響があるとは面白い。

イタヤ馬

ふるさと玩具に「イタヤ馬」というものがあることを知った。秋田角館でイタヤ細工で使った切れ端などで作る子供のためのおもちゃである。イタヤというのは、イタヤカエデの若木の幹を薄く裂いたもので、これを編んでかごやつづらなどを作る。

イタヤ馬
イタヤ馬


面白いことに、このイタヤ馬はかならず左向きに作るそうである。そういえば、乗馬の曳き馬も曳手は馬に左側に立つことになっているし、馬装をする時も馬の左側で作業をする。

小迫(おばさま)延年舞

宮城県栗原市金成町津久毛字小迫(おばさま)の白山神社で行われる流鏑馬神事である。
説明によれば
古来、この馬乗渡しの扇の的を手に入れた部落は豊作であるといわれ、必死に的の奪いあいが行わてきたため、一名「ケンカ祭」ともよばれています。祭りの当日は、那須与一の扇の的射にあやかり宮城県北・岩手県南から数百人の選手が技を競う弓道大会、吟道大会が開催されるほか、地場産品まつりも同時開催され好評です。昭和54年2月3日、重要無形民俗文化財として国の指定を受けました。祭典は、旧3月3日でしたが、現在は4月第1日曜日に開催されています。

流鏑馬神事
流鏑馬神事ー1mほど前の大きな的を射るそうです。


そう言えば那須兄弟は兄の那須与一(宗高)は源頼朝の武将、弟の那須大八郎は源義経の武将と兄弟でも別々の主に仕えていた。最も、兄の那須与一は、直接の上官である梶原景時(かげとき)の陰謀に近い「義経追い落とし」を嫌って、この「扇の的射」のときは、義経配下の武将として従軍していたときのことである。梶原は激怒して、軍罰を科した。この那須兄弟は、もっと複雑で、六郎実高、四郎久高、三郎幹高は平家方にいた。

「木の下が蹄のかぜや散さくら」(蕪村)

顎凹(おとがいくぼ)

広辞苑によれば、顎(おとがい)とは顎(あご)のことである。馬の部位に顎凹(おとがいくぼ)がある。下顎の部位かと思ったが、これはむしろ上顎である。馬の鼻面先端部の最も狭い部分の少しへこんだ部位なのかなと思う。だからこれは上顎と鼻との境目あたりにある。

顎凹(おとがいくぼ)
顎凹(おとがいくぼ)


ここの部位を圧迫することで馬を制御する頭絡がある。対馬の「対州馬」を制御するのに、このハミのない頭絡(無口頭絡)を使う。これは以前のこのブログで紹介したが、顎凹(おとがいくぼ)の説明が間違っていた。この種の無口頭絡は日本の古墳時代あたりから使われていたようで、日本では古い歴史がある。
近代馬術でもハカモア(hackamore)という一種の無口頭絡で馬を制御する仕組みがある。古い時代のものは日本のものと同じように、顎凹(おとがいくぼ)を圧迫するものである。

ハカモア(hackamore)
ハカモア(hackamore)


乗馬クラブで見るものは、以下の画像に似たもので、「鼻頭」を圧迫するのだろうと思われる形態をしている。こちらは、メカニカル・ハカモア(mechanical hackamore)というらしい。これはウエスタンスタイルの乗馬でよく使われている。

メカニカル・ハカモア(mechanical hackamore)
メカニカル・ハカモア(mechanical hackamore)